チャンスを創る、掴む、広げる 北の港湾産業都市はちのへ 『八戸セミナー2023』開催レポート
2023.9.15 -[お知らせ]
八戸市・八戸港国際物流拠点化推進協議会・八戸市企業誘致促進協議会は、八戸市と八戸港の魅力を紹介するため、2023年7月26日(水)、27日(木)の2日間、東京都と愛知県名古屋市で『八戸セミナー2023』を開催しました。立地企業や海運会社の代表にも講演いただき、八戸市への進出理由や同地における企業活動についてお話しいただきました。

▶︎▶︎有数の工業都市・八戸市の魅力
優れた立地環境
両会場では、はじめに、熊谷雄一八戸市長が、市の立地環境を解説。年間の晴天日数が多く、降雪量および台風・水害による被害が少ないため、安定した企業活動を行える気候であること、約22万の人口を有し、北東北第2位の製造品出荷額等を誇る有数の工業都市であることなどを紹介しました。
なかでも力説するのは、陸・海・空路の結節点という交通の便。国際物流拠点である「八戸港」を有し、最短で東京とは2時間41分、名古屋とは4時間18分で結ばれる東北新幹線の「八戸駅」、国内・海外主要都市とを結ぶ「青森空港」・「三沢空港」からアクセスできるほか、2021年に「三陸沿岸道路」、2022年に「上北自動車道」が全線開通したことにより、岩手県北〜宮城県仙台市、青森県津軽・下北地域との接続もスムーズになったことが強調されました。

支援の充実・八戸市への進出企業は129件※八戸セミナー2023開催時
こうした立地環境の良さも一助となり、セミナー開催時点での八戸市への進出企業は129件、5,000人を超える雇用が生み出されています。
「オンリーワンの技術や、世界トップクラスのシェアを誇るような企業、北東北・北海道地域のエネルギーを支える重要な企業が立地しています」と市長。
2002年に東北新幹線八戸駅が開業してからは、製造業に加え、IT・テレマーケティング関連企業の集積が進んでいることも紹介されました。
この背景には、市内に大学・高専・専門学校といった高等教育機関が充実し、人材が豊富であることも挙げられます。「進出した企業の皆様からは、勤勉で粘り強い県民性が評価されています」と市長。市では、八戸市で暮らす学生に「将来、地元で働きたい」と思ってもらうため、企業の認知度向上に努めるほか、各種移住支援制度、UIJターン就職を促進する取り組みも積極的に実施しています。

さらなる飛躍を目指した取り組み
現在、八戸市が目指しているのは、「ひと・産業・文化が輝く 北の創造都市」。2023年度は、子育て世帯への支援拡大、デジタル化の加速、水産業の再興、脱炭素化、中心市街地のにぎわい創出、創業・事業継承のサポートなどさまざまな取り組みを行っています。産業都市八戸のさらなる経済活性化を図るため、新たな産業団地として「八戸北インター第2工業団地」を整備中です。「陸海空路からのアクセスに優れ、内陸の高台にあるため津波・水害リスクが少ないことが利点です」と市長。2024年度中の分譲受付開始を予定しています。
また、市長は、物流・運送業界の「2024年問題」の対策として掲げられている、トラック等による貨物輸送を鉄道・船舶へと転換する「モーダルシフト」、複数の輸送手段を組み合わせて最適化する「モーダルコンビネーション」を推進するに当たっての、八戸の有効性も話します。

「『北海道・本州の玄関口であること』、『船舶・トラック・航空機・新幹線という多様な輸送手段を選択することができ、コストおよびCO2削減を実現できること』、『輸送ルートを複線化することで、リードタイムの最適化と災害時のリスク分散が可能であること』。この3つの利点が八戸にはあると考えています」(市長)
東北初の外航航路 すごい! 八戸港
こうした利点から、市では八戸港を利用した船舶輸送を推進。同港の充実したサービスについては、青森県 県土整備部港湾空港課 常田明課長からも説明がありました。
「物流の2024年問題は、八戸港に貨物を集約し、海運への輸送シフトを検討する好機と考えています」と常田課長。八戸港からの距離に応じた陸送費の補助を新たに始めたほか、八戸港を利用するメリットを見込める潜在貨物を掘り起こすための統計調査等も行う予定です。

コンテナの取扱量が、7年連続5万TEUを超える八戸港は、1994年に、東北ではじめて外航航路を開設。以来、北東北の国際物流拠点として、中国・韓国航路、および韓国航路として4社・週4便、国内港にも接続する国際フィーダー航路が3社・週3便、国内航路が1社・月1便就航しています。2021年ベースで、国別コンテナ取扱量は中国が最も多く、次いでタイ、アメリカ。総貨物量は年間約2,900万トンを誇り、輸移出入のバランスの良さも特徴です。
東京会場では、コンテナ定期航路を就航する企業を代表し、南星海運ジャパン株式会社 セールスグループ 部長代理 小櫃正人氏からサービスについての詳しい紹介もありました。

同社の本社は韓国・ソウル。八戸港には1998年に定期航路を開設し、今年2023年で25周年を迎えました。高麗海運と共同で中国・韓国航路の定期集荷、釜山・上海などへの直行便や、釜山積み替えの香港・ホーチミン・シンガポールなどへの輸出入サービス、中国・カンボジア・ミャンマー・ラオス・ベトナムにおけるトラック・バージ・鉄道による輸送サービスなどを提供し、八戸港の輸送における利便性や優位性の向上に貢献しています。

このほか、青森県では、近年八戸港の脱炭素化に取り組み、2022年12月に協議会を設立。八戸港周辺の製造・エネルギー・運輸等の企業、最新の知見を持った企業が参画し、2023年12月の計画策定を目指しています。
▶︎▶︎八戸への進出理由とは?〜ENEOS株式会社の場合
北東北・北海道地域へのエネルギー供給拠点
東京会場では、立地企業の一社であるENEOS株式会社 執行役員 リソーシズ&パワーカンパニー ガス事業部長 冨士元宏明氏に登壇いただき、八戸への進出理由や、同地におけるサービスについて講演いただきました。
2012年に創立された「八戸LNGターミナル」は、同社100%出資のENEOSエルエヌジーサービスにより運営されています。同ターミナルは、北東北・北海道地域にLNG(液化天然ガス)を供給する一大拠点として、2022年に創立10周年を迎えました。

10社の石油元売会社の再編を経て、エネルギー・素材の安定供給に貢献しているENEOSグループでは、海外におけるガス田開発から輸送・国内の供給まで、LNGの上流から下流までを一手に担い、「カーボンニュートラル社会の実現」に挑戦しています。
石油や石炭と比較して、燃焼時のCO2(二酸化炭素)・ SOx(硫黄酸化物)・NOx(窒素酸化物)の排出量が少ないLNGは、すでに日本国内における発電電源構成の3割強を担っています。「そのニーズは今後ますます高まっていくと考えています」と冨士元氏。実際、八戸LNGターミナルにおける出荷量は順調に増加。それは石油等からよりクリーンなLNGへ燃料転換していることを意味し、同社は八戸地域のCO2削減に貢献していることがわかります。
また、雇用増への寄与はもちろん、企業や学校に対してこれまで400件以上の見学会を実施し、同地域における教育や研究の一助になっていることもうかがえました。

八戸港の可能性に注目
冨士元氏によれば、八戸市へ立地を決めた理由は大きく3つ。「北東北の交通・物流の拠点であり、陸と海の効率的なアクセスが可能であること」、「北東北最大規模の工業都市で潜在的エネルギー需要があること」、「大型船が安全で円滑に航行できる港湾が整備されていること」を掲げます。
また、八戸市による後方支援も手厚かったと冨士元氏。LNGターミナル稼働時には、天然ガスは、-162℃に冷やして液化することから、市が運営するアートプロジェクト「八戸工場大学」の一環として『−162℃の炎を見よう』を実施。アート作品の展示やカフェの運営、トークイベント、ツアーの開催など、八戸経済を支える地域の工場を市民が誇りに思えるようなイベントを行い、ブランド力の向上に貢献しました。

現在同社では、北米とアジアをつなぐ中心としての八戸港の可能性に注目。八戸港におけるLNGの積み替え事業を検討しています。
「LNG運搬の中継基地としての役割を付加できれば、日本をはじめアジア各国へのLNG供給の手助けになるような国際的な社会貢献ができると考えています」と冨士元氏。今後も八戸市に多大な貢献をもたらしてくれることは確実です。

▶︎▶︎八戸への進出理由とは?〜多摩川精機株式会社の場合
世界ナンバー1シェアを誇る製品を開発・販売
立地企業を代表し、名古屋会場で登壇いただいたのは、多摩川精機株式会社 代表取締役社長 松尾忠則氏。同社では、モータ技術・電子回路技術・精密機械技術を融合した製品を「モータトロニックス」と総称し、工場設備関連製品、車・鉄道など輸送機器関連製品、航空・宇宙・防衛関連製品、医療分野にも活躍する科学機器関連製品、パチンコ・スロットマシーンなどに使われる遊戯関連製品を開発しています。なかでもハイブリッド自動車のレゾルバ(角度センサ)は世界ナンバー1シェアを誇る看板製品です。
同社は、現在の東京都大田区で1938年に創業。創業者・萩本博市氏の「農業中心の郷里の発展は精密機械工業化しかない」という夢を実現すべく、1942年に長野県飯田市に飯田工場を新設し、現在は同地に本社を構えます。

1972年、同社社員で青森県三沢市出身だった平内義弘氏が、協力工場として「三沢エンジニアリング株式会社」を設立し、独立。1974年に故郷である三沢市に移転します。
「創業者・萩本博市は、地域の工業化に向け、30歳になったら独立して工業の森を作れと若い社員に常に言っていました。その実例のひとつが三沢エンジニアリングです」と松尾氏。多摩川精機は、三沢エンジニアリングとの縁もあり、地域振興を目的とする八戸市の企業誘致に応じ、1991年に八戸市へ進出しました。
地域の発展に貢献し、地域に根差した企業でありたい
「進出を決めた当時、八戸市は飯田市の2.4倍の人口を有していたこと、10年後に新幹線が通り、交通の便が良くなること、また、地球温暖化の影響で、将来八戸港からスウェーデンまで、北極海経由で行けば20日で到着できる、八戸港は漁港から貿易港に変わるんだという話を市長からいただいたことが、事業所開設の後押しになったと聞いています」と松尾氏。
現在は30km圏内に八戸事業所、八戸第一・第二工場、福地第一・第二工場、三沢工場を有し、2022年度の売り上げは174億円と国内売り上げの38パーセントを占めるまでに飛躍しました。

生産から販売までを一貫して行う同社では、福地第二工場内に「モータトロニックス研究所」を設置。「地域の工業化を図り、地域へ貢献する」という創業理念、また、「技術の最先端を開発すれば、絶対に市場から必要とされる」という創業者の言葉に習い、八戸で生産する製品の開発を、地域内で行います。「現場が近くにあることは設計者にとってもメリットがある」と松尾氏。現在までに約500名を採用し、雇用の拡大にも貢献しています。
「100周年を目指し、地元の皆様にご支援・ご協力をいただきながら、今後も地域に根差した企業であり続けたい」という言葉で講演は締め括られました。
▶︎▶︎良質な立地環境を支える八戸のライフスタイルと支援制度
「風」と「土」が連携しながら発展する八戸

両会場を通じ、市長からは、進出後の暮らしを支える八戸の食や文化についても紹介がありました。新鮮な海鮮を活かした郷土料理や地酒、夏の「八戸三社大祭」や、冬の「八戸えんぶり」などの祭り、日本最大級の朝市「館鼻岸壁朝市」、中心街に張り巡らされた8つの横丁、全国初の公営書店「八戸ブックセンター」、2021年にリニューアルオープンした「八戸市美術館」など、同市は魅力にあふれています。

「八戸市には、『風と土と心』という言葉があります。外から吹いてくる『風』である立地企業、もともとある地元企業や地元の人を表す『土』。風と土が連携しながら発展してきたのが八戸の歴史です。八戸には、外から来ていただく企業や人を受け入れる土壌があります。企業の皆様に当市がチャンスを創り、また、掴み、広げることができる魅力的な土地でありますよう、私たちもさらなる産業振興を進めてまいります。立地の際には全力でサポートしますので、八戸にお越しいただきますようお願い申し上げます」と市長。
各種支援制度等を活用し、ぜひ八戸への立地をご検討ください。

充実の支援制度
両会場でも紹介した支援制度の詳細は、以下より確認できます。
八戸市では、拠点開設・事業展開を行う企業に対しての立地奨励金や雇用奨励金のほか、イノベーティブ産業(自動車、航空宇宙、医療福祉)集積促進事業補助金、IT関連企業立地促進事業補助金、本社機能移転支援補助金など支援制度が充実しています。
●八戸市企業誘致促進協議会支援制度
●八戸港国際物流拠点化推進協議会支援制度
これらは、青森県の補助金と併用が可能なほか、八戸市では、「八戸圏域」として連携中枢都市圏を実現し、共に地域活性を行う、おいらせ町・五戸町・南部町・階上町・三戸町・新郷村・田子町という周辺7町村の支援制度も紹介しています。詳細は、八戸市 商工労働まちづくり部へお問い合わせください。皆様のお越しを心よりお待ちしております。
▼お問い合わせ(八戸市 商工労働まちづくり部)
●企業誘致・八戸市企業誘致促進協議会支援制度に関すること
産業労政課 企業誘致推進グループ (TEL 0178-43-9048)
●貿易振興・八戸港国際物流拠点化推進協議会支援制度に関すること
商工課 貿易振興グループ (TEL 0178-43-9244)